原作第8回「19年5月」の回ですずさんは、家の周りで採ってきた雑草で料理を試したり楠公飯を炊いてみたりしてるのだが、呉市では19年春頃までは少ないながらも米の配給がほぼ行われ、代用食の配給はあまり行われていない。それが4月くらいから脱脂大豆やトウモロコシなどで代用配給される場合があるようになり、5月に入ってそれが多くなってきている。野菜も同じで、4月からガタガタと配給量が目に見えて減ってしまっている。すずさんが野草料理をする場面を、こうのさんがこの時期のこととして描いたのはなんだか納得できてしまう。
それがさらに丸一年後の昭和20年5月になると、米の配給量はそこそこ保たれてはいるが、野菜に関しては、配給が少なくなってきている19年5月のさらにその3分の1くらいしか配られていない。これはその後の夏には限りなくゼロに近いところに落ち込んでゆく。
そうした流れは20年5月19日には、広島県下の学童を使って、食用野草の採取を行おうという動きにまでなってしまう。家庭の主婦が個人的に考えてやるのとは全然違うレベルの話で、県単位でそういうことをしなければならなくなってしまっているということだ。ここでは、採集すべき食材として、
「よめな、よもぎ、はこべ、ぎしぎし、すずめのえんどう、あざみ、ふき、わらび、ぜんまい」
などと挙げられてるのだけれど、春先の野草も含められていて、ほんとうに食べられるものが集められるのか心もとない。とはいえ、ここで集めようとしている草は、すずさんみたいにフレッシュなまま料理の材料にするのではなく、乾燥させて粉末や切干にして保存食化し、ただでさえ足らなくなっている米に混ぜて炊く材料にしようというのだから、どっちでも良いのかもしれないのだが。
一方の平成27年5月。
クラウドファンディングの効能のひとつとして、それが話題になってあちこちから取材を受けることが多くなってきている。文化放送のインターネットラジオにはもう2度も呼んでもらった。最初に浜松町の文化放送スタジオに行ったとき、毎朝出勤するあいだに文化放送の番組を聴いている、といったら、2回目の時にはその時間の番組パーソナリティの野村邦丸さんのサイン色紙が用意されていて、いただいてしまった。インターネットラジオの出演者の八木菜緒アナ、田中真奈美さん、黒岩希未代さん、井上奈菜さん、和田昌之さんたちにも仲良くしていただいて、ここでも味方が増えたようなありがたい気分。
などといっていたら、もう一方で、16日夜のニコ生の番組『ゲッチメ!』にこうの史代さんが出演されるということになった。19時半から放送ということだったのだが、生憎その時間は帰宅している真っ最中だった。と、漫画家のとだ勝之さんからツィッターで、
「見られてますか?」
と呼びかけられてしまった。とださんはこうのさんの大学の先輩にあたる。このあいだのコミティアのときにも、わざわざわれわれのレイアウト展まで来ていただいたようだったのだが、たまたまこちらが留守にしていたためにお目にかかれずじまい。ということで、実は、リアルにはまだ一度もお目にかかったことのない方だったりするのだが、このあたりがインターネットの妙なるところでもある。そのとださんは、こうのさんの収録の現場にいっておられるらしい。
まだ家にたどり着けてません、というと、とださんから、
「『緊張するのでその方がいいです』とこうの先生が言われてます(^^)」
と、返事が返ってきた。
そういうことでいうなら、昨年5月に広島の旧日銀を会場にレイアウト展と併せて僕のトークをやったときに、こうのさんが会場に来ておられて、はじめはえらく緊張したことを思い出す。さらにトーク後の質問タイムにも、こうのさんが真っ先に手を挙げて質問してこられたので、終わりの方も緊張したのだった。
ええい、こちらからも緊張させて差し上げようか! などと、つぶやきつつ、家に帰るなりパソコンでその番組を開いたのだが、インターネットは双方向通信とはいえさすがに緊張を与える手段もなく、ただ眺めるだけ。
しかし、ニコ生の画面を見たら、こうのさんは僕らのほうで作った「この世界の片隅に」Tシャツを着て、同じく僕らで作った「この世界の片隅に」手ぬぐいをスカーフ代わりにして下さっていた。こうのさんはすごくサービス精神旺盛な人なのだが、今回もまた多大なるサービスぶりをこちらにまで向けていただいていた。番組内でクラウドファンディングの告知もしていただいて、ありがたい限りです。
ところで、その5月16日(土)より7月10日(金)まで、福岡県小倉の北九州漫画ミュージアムで『この世界の片隅に』のレイアウト展が開催されている。会期中の6月6日(土)には監督トークもあるのだが、電話かメールで参加申込申し込みが必要とのこと。
よろしくお願いいたします。
http://www.ktqmm.jp/kikaku_info/6413