ついこの間だと思ったお正月もはるか彼方、1月も終わり、2月に入ってしまった。
2月なのだから2月の話題をするべきなのだろう。
2月は『この世界の片隅に』の出発点でもある。原作の冒頭3エピソードは読みきりの短編を連ねたものである意味番外編であり、連載になった『この世界の片隅に』最初の回は「第1回『18年12月』」。だが、少しおいた第2回「19年2月」ですずさんが呉に赴き、彼女のその土地での生活が本格的にスタートする。
この「19年2月」の回は2月何日にあたるのだろう、と繰り返し考えた。
嫁入りの話なのだから大安吉日なのだろうか、2月11日金曜日は紀元節の旗日で大安だし。と思っていると、安芸門徒は大安に拠らないと聞いてぐらついてしまう。
すずさんが「うわー、ほんまに真っ暗じゃ」というので新月の晩になるのかと思って月齢を調べてみたり。けれどこの時期にはまだ呉の街では本格的な灯火管制は行われておらず、案外真っ暗にもなりそうにない。
いろいろと考えた挙句、2月23日ということにしてみた。
これはこうのさんが原作で描いたのよりも少し遅い時期にあたるはずだ。こうのさんは第4回で回ってくる回覧板に「二月下旬の配給当番」と、21日(月)に隣保の常会が開かれるお知らせを書いている。ということは、原作のすずさんの嫁入りはたぶん2月13日の日曜日くらいなのではないかと思う。
けれど、ちょっと理由があって、この映画でのすずさんの嫁入りは23日にしてしまった。2月23日は大安だし、月齢28で日が沈めばほぼ暗夜でもある。だが、それ以外にちょっとした理由がある。それが何なのかは本編完成時のお楽しみということで。すずさんには、いかにも「軍港」へ来たのだという気分を味わってもらいたい。
さまざまな記録をひもといてみると、すずさんが過ごした昭和19年2月は1日が雪、2日も雪。しかもこの2日間は「粉雪」と書かれている。2月3日に至っては「大雪」だ。16日も雪。20日午前中にも雪が降って呉は「一面の銀世界」とある。27日がまた雪。
広島は暖かくって雪なんかあまりみない土地だ、と聞いていたのだが、この昭和19年も20年も雪の日が多い。戦時中というだけでなく、気候が悪くて農作物の実りが悪い時期だったのかもしれない。これで、薪炭の配給も滞り気味とあっては、おしゃれな女性たちもそれはもんぺ履きになってしまったことだろう。
などとついくどくどと書いてしまうのは、自分が寒がりだからだ。
早く暖かくなって欲しい、とは思わない。季節など進まず、今現在の日付のまま時間を重ねられたらいいのに、と大真面目に思う。仕事は山ほどある。