個人的に手元に控えたものなので多少の誤差もあるだろうとは思うが、昨年2015年12月末からこの3月も終わろうとしている時点までの間に、作画作業の各段階で200~250カット分だけ作業完了数が伸びた。
『マイマイ新子と千年の魔法』の本編ラストカットのカットナンバーが1025だったのだが(総カット数の実数はこれよりも多少増減がある)、今の時点で作画打合せの完了数はこれを抜いている。とはいえ、まだまだ予断を許さない。
背景原図の完成数は、作画打合せ達成数よりも百分率で2ポイントだけ少ないだけだ。先回りしてレイアウト作業の背景原図の部分だけ先行させて、ある程度舞台背景を形にしたものを原画マンに渡して、その先の演技作りの作業に取り組んでもらおうとしているからだ。当時の風景をできるだけ実在しただろうままに描き出したいと思えばこその先回りなのだが、その後に背景を描くことになる美術スタッフのことを思えば、もっともっと先回りできていればよかったとも思う。
作画が進み、動画まで完成したところで、今度はその同じカットの背景に実際に乗せてセルの色調を決める作業を行う。ということは、作画の進捗と美術の進捗の足並みが完全に揃っていれば効率的なのだが、どうしてもそれぞれの都合から作業を進めてゆくカットを選ぶものだから、動画が完成していても背景がまだ無いカット、背景ができていても動画がまだ無いカットが多くて、この最終段階の直前で足踏みしているカット"も"かなり多くて、400カット近くが棚に置かれて相方を待つことになってしまっている。もう少しすればもっと噛み合うものが増えてくるはずで、そこでいっきに作業が進展するはずだと期待したい。
劇場用長編では全体をA、B、C、Dの4パートに割って絵コンテを4分冊にしていることが多いのだが、これは「長編」が80分くらいの長さだった頃の名残で、つまり1パートあたり約20分、テレビアニメの本編尺1本分とほぼ同じになって計算を立てやすいということから始まったことであるように思う。『この世界の片隅に』ではFパートまである。このうちのAパートはカット表をかなりの部分まで塗り潰せてきた。全カット撮影済みにまで持ち込むのも「夢みたいな話」ではなくなってきている。Aパートが完パケにできたら、次いでBパートも完成させようとこの部分の作業も急いでいる。完パケといっても本当の意味での完パケではなく、多少のリテイクは後回しにして進めている部分もある。画面ができたところから、音の仕込みにも入っていかなければならないからだ。
この3ヶ月に達成した数字としては「BGM35曲を打合せ」というものもある。そろそろそうした音響方面のことも視野に入ってき始めている。BGMの作曲や効果音の仕込を進めるためには、映像の長さが定まっていたほうがよい。
そうした理由もあって、映画の冒頭、Aパートの前半3分の1くらいまでは編集も行ってとりあえずの尺出しも終えた。珍しいくらい1コマも切り落とさない編集になった。尺については絵コンテの段階でギリギリまで絞り込んであったのだが、それがこうした結果となった。
われわれの作業はまだまだ続く。1コマたりともおろそかにしたくは無く、一片たりとも悔いを残したくない。ただそれだけの意地みたいなものに支えられて、今日も仕事場の机にかじりついている。